原点を振り返る15

SPAブランド急成長期 突入

CORDIERが企画開発チームを、ONスタイル(エレガンス)とOFFスタイル(カジュアル)に二分していた頃、ワールドでは、OZOC・アンタイトルといったSPAブランドが飛ぶ鳥落とす勢いで急成長していました。と、同時に社長が交代。ここは割愛させて頂きます。

 

CORDIER等の既存ブランドはいわゆる「卸」で、展示会での受注生産に対し、SPAは【speciality store retailer of private label apparel】の略で、自社ブランドが製造から販売まで一貫して行います。

 

これまでは、営業部や店舗経営者の意見を参考にしながら、企画はあくまでブランド主導でしたが、消費者のニーズに敏速に対応するマーケット主導へと変化していく時代へ突入していたのです。

 

卸ブランドでは【カリスマ性】を持つコーディネーター中心に、0から企画開発していました。編地の資料や海外市場を参考にしながら、デザイナー1人1人が想像し、絵を描き、パターン指示し、形にして、それを修正して作り込んでいくという物作りをしていました。企画から本生産まで6~8ヵ月かけていました。

しかし、SPAブランドは【消費者ニーズ】中心なので、期中は市場で売れているトレンドキーワードや自ブランドで売れている品番の枝葉を増やす作業的な物作りが中心。企画から本生産まで2~3ヵ月で仕上げなければいけません。

 

 

CORDIERは、ニットの糸もイタリアの一流紡績会社であるZEGNA BARUFFA社でオリジナル糸を開発したり、生地もL&F(Lora Festa)社の新カシミヤジャージでスーツをデザインしたり、素材開発も世界でTOPクラス。今、思い返しても世界最先端の企画だったと思います。

buruffa

ですから、デザイン出しの時期は本当に大変でした。深夜までひたすら絵を描いて、遠方から通っている私はチーフのご自宅で仮眠させて貰ったり、近くのホテルに泊まったりして、何とかスケジュールをこなす日が続きます。しかし、当時は若かったし、学びたい!っていう気持ちが大きかったので、充実感で満たされていました。

 

この時代の貴重で価値ある物作りを経験させて頂き、本当に感謝しています。

 

本物を見て触ってきたので、物を見る目が養われました。縫製もプレタポルテレベルでしたし、時間とコストにさほど縛りがなかったので、素材の特徴を生かした仕様・始末をとことん追求する事も出来ました。
今では、こんな物作りをしているブランドは激減していますし、新人を採用して教育するノウハウもないでしょう。

この時代の経験を生かして、開発力をあげながら時代の波に乗る事で、このアパレル大不況を乗り切る事が出来るのでは?と思えてなりません。

 

SPA化 始まる!

 

この時流は、CORDIERにも・・・。次の組織変更で、今まで通り7~8ヵ月サイクルで企画する「初期企画」チームと、SPAと同じような動きで2~3ヵ月サイクルで企画をする「現物企画」チームに分かれました。

ベテランデザイナーと新人は初期企画、中堅は全員期中企画という配置でした。
それは、中堅デザイナーに指示を待つのではなく、自発的に動ける様になって貰いたいという意味もあったそうです。そして、この【現物企画】チームは、のちに【バーチャルSPA】と呼ばれる事になります。

 

この続きは、また次回に♡最後まで読んで頂き、有難うございました!