ジーンズソムリエ&Brand producerの雜賀です。
先日、思わぬ長編となった自身の振り返りBlogをようやく書き終えました。
思えば、このアパレル業界に入ってはや20年!生まれてから20歳になるまでって、離乳食から普通のご飯が食べられるようになって、幼稚園から小学校に入学して、中・高・大・・・となるまでと全く同じ年月なんだな~ぁと思うと、そりゃ~~Blogも簡単に終わらないですよね(笑) でも、20年間経っても未だにわからない事だらけ。まだまだひよっ子です(;^ω^)
播州織総合展示会で目を引いたブース
先日、神戸ポートピアホテルで【播州織総合展示会】が行われました。
私も、恩師の菅原先生にお誘い頂き、大田先生、岡本先生と同行させて頂きました。
播州は、その昔「がちゃ萬」といって、織り機が一回ガチャっとなると一万円儲かると言われる位、勢いのある先染めの産地でした。ギンガムチェック等の先染めの柄物を得意としていました。
前職で生地メーカーさんの展示会やプレゼンを聞く機会はありましたが、こういう綿の先染めチェックはコストの関係上、中国製を使う事が多く、国内素材はあまり使わなくなっていました。
戦後の技術力では中国に負けてしまう。播州の先染めは独自の技術をどう進化させたのか?とても興味がありました。
展示会場内で一番目を引いたのが、嶋田製織株式会社です。ここは社長自ら自社の生地を使った製品ブランド【hatsutoki】も立ち上げて販売もされています。
織り柄も、他とは一味違って、ちょっと珍しいチェックやパネル柄も目立ちました。
⇧島田製織(株)のブランド【hatsutoki】FBより画像頂きました。
実はもう一つ、目を引くブースがありました。それはBanshu-Ori Next Japanという2代目の20代社長の会社が6社集結して出店しているブースです。
ここは、生地の展示はほぼしていなくて、上田安子服飾専門学校生と神戸工科大学生の播州織を使った作品を展示していました。
それも面白かったのですが、、、。
私が一番気になったのはこの播州織の「手ぬぐい」です。これは、肌触りもいいし、柄もインパクトあるし、喜ばれるんじゃないかと思いました。
この方、播州織工場2代目社長。まだ20代。
本当は大学を出て、体育の先生になりたかったそうです。でも、家庭の事情で、夢を諦めて工場を引き継ぐ事に・・・。最初は嫌で嫌で仕方なかったそうですが、生地を織りあげているうちにどんどん播州織の魅力にのめり込んでいったそうです。今では、織りの特許取得や製品開発まで意欲的に活動されています。
「やっとこの仕事が楽しいと思えるようになった。」と笑顔で話してくれた時、何だかホッとしました。
これからの生粋国内生産の理想のスタイル
素材展を見て、正直、鮮度を感じないというか、アパレルとあまり連動していない状況だと感じずにはいられませんでした。昔から、川上(生地屋)と川下(アパレル)の間には距離があり、情報共有が出来ていませんでした。それは、両社の間に商社が入ってしまうのも原因の一つ。
産地や生地屋は、生地が売れないから製品を作り出しています。
良くご当地ブランドは成功しないと言われていますが、ファクトリー目線から入ると、どうしても「技術のエゴの塊」みたいなデザインになり、作り手の自己満足で終わってしまう。買い手の事を全く考えていない商品ばかり。確かに、「物」としては面白いけど、『これ、誰に向けて作ったの?どんな時に使うの?』と首をかしげてしまう。だから売れないのも当然。素人感丸出しです。
その技術のスペックは、商品を買う理由にはならないからです。
それはファクトリー目線から見ると当然の事。自分達の技術やクオリティをアピールしたくなるのは当然です。毎日毎日、その技術力を磨いているのですから。
しかし、それが製品力となるかは別問題。独りよがりな企画は弱いんです。
これまで生地屋は、アパレルからの依頼内容で、製品として消費者に喜んで貰える技術や感度を得ていたけれど、それがなくなると、生地工場は何を作ればいいのか自分達で模索しなければねりません。
一方、アパレルはコスト面と納期面で、国内素材を使うのが厳しい為、どうしても海外に発注してしまう傾向にあります。
現実問題、一般的な平織のチェック柄なら、ネルシャツやカシュクールシャツを得意とするブランドも多く、需要はありますが、すぐ発注出来る様に柄もカラーも種類豊富に在庫している海外に頼っています。この定番の平織チェックポジションは、よほど市場で求められる『個』を出さない限り、海外には勝てないでしょう。
とはいえ、アパレル側も、このポジションは価格競争に陥っているので、他ブランドにない『個』を模索しています。
どちらも目的は『個』を出す事。この状況、とっても歯がゆいです。
間を取り持つのは誰?!
生地工場の技術やクオリティを、デザイナーが見て、自ブランドにどう製品に落とし込むかを考案し、二人三脚で開発していくのが最も理想です。そうして、様々な視点やフィルターを通して強い企画となっていきます。企画だけでなく、生産サイクルも同じです。要望されて改善するという作業を、お互い歩み寄りながら続けていく事で出来なかった事が出来る様になる。
段階があるのです。
この理想の動きを再現したい。
嶋田製織さんや20代の熱き技術者もいる。
川上と川下の合同企画は、きっと今までにない発想で楽しいブランドが生まれるでしょう。